何が問題?AppleがiPhone旧機種の性能を意図的に下げていたことを認める

何が問題?AppleがiPhone旧機種の性能を意図的に下げていたことを認める

「Appleが古いiPhoneの性能を意図的に落としているのではないか?」という疑念が持ち上がったことに対して、2017年12月20日、Appleはこの内容が事実だと正式に認めました。これを受けて早速、Appleに対して損害賠償を求めるクラスアクション(集団訴訟)が提起されました。原告は他のiPhoneユーザーにも訴訟に加わるように呼びかけています。

問題の経緯

海外掲示板Redditにて、iPhoneの性能が時間の経過と共に著しく低下しているという声があがり議論が巻き起こったことが始まりです。

iPhoneの異常な処理速度低下に悩まされていたユーザーが、ベンチマークテストを実施すると、かなり処理性能が低いという結果に。しかし電池交換後、Geekbenchでのベンチマークスコアが倍近くになったとのこと。体感での動作感も大きく向上したとのことです。

当然そんなことがあるはずないと否定のコメントも入ったものの、「自分も電池交換後にベンチマーク結果が向上した」という同様の報告が次々と多数寄せられ、スレッドのレス数は数百に。どの報告も古いiPhone、特にiPhone 6 / 6Plus / 6s / 6sPlusに集中しているようです。

これらのiPhoneでは、バッテリー残量が50~60%で電源が落ちるという問題が発生し、Appleがバッテリー無料交換プログラムを実施したことがあります。この時、想像以上に影響を受けるiPhoneの台数が多かったので、iOS 10.2.1をリリースし、ソフトウェアでの問題解決も図られたのです。この件との関連も疑われました。

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Appleのコメント

こうした噂から議論が巻き起こり、ついにAppleはTechCrunchに対して公式コメントを送りました。

それによると、リチウムイオン電池は古くなると出力電圧が低下し、シャットダウンが起きることがあります。これを防ぐため、パフォーマンスを抑制させる処理を行っているとのこと。

Appleの目標はあくまでデバイスの寿命を延ばすことでユーザー体験を向上させることにある、と主張しています。そのような処理がなされているとAppleが認めたデバイスは以下の4機種です。

iPhone 7/iPhone 6s/iPhone 6/iPhone SE

(以下Appleのコメント)

Our goal is to deliver the best experience for customers, which includes overall performance and prolonging the life of their devices. Lithium-ion batteries become less capable of supplying peak current demands when in cold conditions, have a low battery charge or as they age over time, which can result in the device unexpectedly shutting down to protect its electronic components.

(私たちの目標は顧客に最高の体験を提供することです。これには全体的な性能向上や端末の寿命を延ばすことも含まれます。リチウムイオンバッテリーは、寒い状況下でピーク電流を流せなくなったり、繰り返し使うことで最大容量まで充電できなくなったりします。このせいで、電子部品を保護するために予期しないシャットダウンがもたらされ得るのです)

Last year we released a feature for iPhone 6, iPhone 6s and iPhone SE to smooth out the instantaneous peaks only when needed to prevent the device from unexpectedly shutting down during these conditions. We’ve now extended that feature to iPhone 7 with iOS 11.2, and plan to add support for other products in the future.

(昨年、前述の状態になったiPhone 6、iPhone 6s、iPhone SEで、瞬間的な電力消費を緩和して端末が予期せぬシャットダウンを起こすのを予防する機能をリリースしました。私たちは今、この予防機能の対象をiOS 11.2でiPhone 7まで広げました。そして、今後も他の端末を対象に加える予定です)

上記のとおり、Appleはバッテリーの劣化したiPhoneが予期せぬシャットダウンを起こすのを回避したりバッテリー寿命を延ばしたりする目的で、iOS更新のタイミングで意図的にiPhoneのピーク性能を落としていることが確認されました。iPhone 7におけるピーク性能制限機能導入のタイミングから見て、近い将来にはピーク性能を制限される端末が出始めるようです。

マーケティング的にはあり?

Appleが目標とする「最高の体験」の提供にとって、予期せぬシャットダウンを回避することが重要であるという主張は一理あると思います。

Appleに限らず企業は最高の顧客体験を提供するために商品/サービスを社会に供給するべきです。

また、AppleがiPhoneで制限するのはピーク性能であり、モバイル端末がCPUの性能をフル活用する場面はベンチマークソフトの計測を除けば、新規アプリの導入時などの限定的な場面に限られるため、ピーク性能を制限されたとしてもユーザーが「遅さ」を感じることは少なく、実用上の問題はないとも考えられます。つまり、顧客が感じるベネフィットは変わらない。。

むしろ、予期せぬシャットダウンの回数が減り、バッテリー駆動時間が延びるという恩恵の方がメリットは大きいとも言えそうです。

ユーザーへの説明責任を果たされるべき

一方で、Appleが今回の問題が溯上に挙がるまで旧機種のiPhoneの性能に制限を設けていた事実を公表していなかった点は問題 だと思います。スマートフォンに限らず、ユーザーは想定以上の経年劣化には厳しいです。製品から享受できるベネフィットが減ってしまい、Appleが言及する「最高の顧客体験」が損なわれているという訴訟グループの指摘は正しいです。

また、iOS更新時にこの事実が公表されていないということはユーザーは、「ピーク性能」を取るのか「バランス型」を取るのか選べなかったということになります。加えて、性能低下がバッテリー起因のものであることをもしユーザーが知っていたら、新しい端末の購入しないですよね?

企業からすれれば、自社のプロダクトライフサイクルは早いにこしたことはありません。

別の問題ですが、iPhoneはバッテリーの交換をユーザーが安易にできない構造になっています。Appleはバッテリー交換プログラムを提供していますが、バッテリーを交換するにはAppleに問題の報告とiPhone本体を送る必要であり、またバッテリーの交換には79ドル(日本では税別8800円)が必要です。常識/想定の範囲外で不備が出ることを分かっていた上で、このようなサービスを設定していたとすれば、The Vergeのように「Appleは早ければ1年後に崩壊し始める製品を意図的に販売している」と指摘されても反論はできないですよね。

 

Appleが謝罪&対応策を発表(12/28追記)

Appleが今回の騒動を受けて謝罪、加えて一部端末を対象に割引価格でのバッテリー交換を提供すると発表した。

内容は、iPhone 6以降の機種を対象に、バッテリー交換が必要なものについては、現状79ドル(約8900円)である保証期間外での交換価格を、来年1月下旬から12月まで29ドル(約3300円)に値下げすると発表

また、老朽化したバッテリーがパフォーマンスに与える影響を確認しやすくするソフトウエアアップデートも提供する予定だという。

謝罪文とバッテリーの交換についてはAppleの公式web siteで以下のように言及されています。

原文は英語なので、簡単な日本語訳も併記しておきます。

謝罪文パート_抜粋

お客様からのiPhoneの老朽化したバッテリーの性能の取り扱い、また説明不足に関して多くのご意見をいただいております。今回の件でお客様を失望させてしまったことを認識しております。大変申し訳ございませんでした。今回の件では情報の行き違いが多かったこともあり、我々の変更点/対応につき明確にさせていただきたいと思います。

(原文)

We’ve been hearing feedback from our customers about the way we handle performance for iPhones with older batteries and how we have communicated that process. We know that some of you feel Apple has let you down. We apologize. There’s been a lot of misunderstanding about this issue, so we would like to clarify and let you know about some changes we’re making.

バッテリー交換に関するパート

保障期間外のiPhone6以降のバッテリー交換が必要な機種については、バッテリ交換費用を$50値下げ($79→$29)します。期間は2018年1月末から12月にかけてで全世界共通です。詳細はapple.comをご確認ください。

原文

Apple is reducing the price of an out-of-warranty iPhone battery replacement by $50 — from $79 to $29 — for anyone with an iPhone 6 or later whose battery needs to be replaced, starting in late January and available worldwide through December 2018. Details will be provided soon on apple.com.

Source; A Message to Our Customers about iPhone Batteries and Performance

 

今回Ethical(道徳的/倫理的)なマーケティング戦略の重要性を改めて実感しました。

iPhoneは過去約10年、毎年発売されています。iPhoneの購入を検討する際はこの与件を織り込むことは大事かもしれません。

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